大本山總持寺 12月の伝道標語

「同事行」の実践を
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『東京ディズニーランド』といえば子ども達から大人まで人気のあるテーマパークです。誰でも一度は訪れてみたい所であり、あこがれの場所でもあります。ここは三十年程前にオープン。以来ずーっと御客様が喜んでいただけるように」、満足してもらえるようにと「マニュアル」(決めごと)がきっちりと完備していると言われています。

ある時そのディズニーランドの中の一つのレストランでの出来事です。
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若い夫婦がそのレストランにやって来て、自分達の食事に加えて「お子様ランチ」を注文したのです。東京ディズニーランドのマニュアルでは「お子様ランチ」は九才以下の子どもにしか出さないことになっているのです。困ってしまったウェイトレスが訳を尋ねると、この若い夫婦はちょっと沈黙したあと「実はここに来ることを楽しみにしていた娘が、昨年事故で亡くなってしまったのです。今日はその娘の命日なので一緒にここで遊んで、一緒にここで食事をさせたくて・・・」





これを聞いたウェイトレスはこみ上げてくる涙をこらえて、上司に相談に行きました。しばらくするとそのウェイトレスとチーフは精一杯の笑顔で「承知いたしました。今一度レストランの入り口から入り直していただけますか?」とうながしました。

若い夫婦はけげんな思いで入り口まで戻り、入ろうとすると、そのレストランのスタッフ全員がきれいに並んで出迎えてくれました。「おとうさんとおかあさん、そしてかわいいお嬢ちゃん、ようこそいらっしゃいました。」と言って、四人掛けの席に子供用の席まで用意して「三名様こちらへどうぞ」と案内したそうです。若い夫婦は本当にうれしそうに涙を浮かべ「お子様ランチ」を囲みながら食事をしたということです。

いかがでしょうか。これはディズニーランドのマニュアルにはないものですが、これこそ「お客様へ感動を」の精神を見事に実践したものです。この若いウェイトレスとスタッフの機転と「心」を込めた応対に反対に感動をいただきました。

曹洞宗の信仰生活の実践の中に「同事(どうじ)」という言葉があります。私達が日常生活を過ごす中の「仏心(ぶっしん)」(ほとけごころ)の要を表す言葉です。仏教の説く慈悲の根本が「同事」です。「同事」とは相手と同じ立場になって思いやり行動することです。修証義は「同事というは不違なり」と定義します。「不違」とは、相違しない、たがわぬ、そむかぬことですから「同じである」ということです。要するに対立や区別のない世界(自他不二)です。自分と相手は二つでありながら一つになってしまう。違いはあるが対立しない、理解と協調の世界を願うのが「同事」なのです。もっとわかりやすく言うと、相手と同化すること、一如になりきること、お互いがお互いを生かし合うことなのです。このディズニーランドのレストランの出来事、スタッフのとった行動こそが「同事行」なのです。

私達は皆、生まれながらに「仏心」、やさしい心、うるわしい心、慈悲の心を持っています。せっかく持っているその心を「同事行」まで発展させて日常生活をおくる努力、習慣をつけて頂くことを願っています。

平成24年12月 (熊本県 芳證寺住職 村上和光)

<追記>
この出来事に感動した若い夫婦は、帰宅後に手紙を書きました。
 「お子様ランチを食べながら涙が止まりませんでした。まるで娘が生きているように家族の団欒を味わいました。こんな娘との家族団欒を東京ディズニーランドでさせていただくとは、夢にも思いませんでした。これから、二人で涙を拭いて生きて行きます。また、娘を連れてディズニーランドに必ず行きます。そして、今度はこの子の妹か弟かをつれてきっと遊びに行きます」
by seiryouzan | 2012-12-14 20:49 | 大本山總持寺今月の伝道標語

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