2011年 06月 11日
東日本大震災:仮設入居者への配給打ち切り…陸前高田
陸前高田市では、仮設住宅に入居した人たちへの食料の配給を10日で停止する。10日は、最後の配給として一人10キロの米が配られた。米を運ぶ仮設住宅に住むお年寄り=岩手県陸前高田市で2011年6月10日午後2時15分、小関勉撮影
岩手県陸前高田市は10日、仮設住宅入居者への食料などの支給を打ち切った。この日は各仮設住宅に自衛隊のトラックが最後の物資を搬入。配給された10キロ入りのコメなどを大事そうに抱える被災者の姿が見られた。
「誰かに車に乗せてもらわないと(買い物に)行かれないよ」。市立米崎小学校の仮設住宅で1人暮らしをする佐藤京子さん(71)は支給打ち切りを嘆く。配給されたレトルトカレーや缶詰などを衣装ケース2箱分と小さなかごいっぱいにためた。「(仮設の退去期限とされる)2年かけて、ゆっくり食べるつもりさ」
持病や震災後のけがで10種類以上の薬を服用している。42年前に建てた自宅は津波で壊れ、取り壊すが、毎日通い、近所の人と話したり庭の手入れをする。「家がなくなったら、おかしくなるかもね」
仮設住宅に知人は少ない。心を癒やしてくれるのは自宅から持ってきた鳥の人形。話しかけると2度オウム返しする仕掛けだ。「『よーぐ生き残ったね、おらと同じだな』って話してたの」
自治会長を務める佐藤一男さん(45)は5月初旬、両親や妻、子ら一家7人で入居。6畳1間と4畳半2間にキッチン、バス、トイレ。「収納がなく狭い」。夜は4畳半2間に布団を敷き詰め、子どもを抱いて眠る。9人で暮らす家庭もある。
佐藤さんはカキ養殖をしていたが、津波に施設を流された。事業再開へ向け、毎日漁港でがれきを撤去する。一方、米崎小の仮設住宅に入居する60世帯のうち18世帯は1人暮らしの高齢者。見回りもしており「仕事をしながらでは負担が重い」。高齢者の孤立を防ぐため集会所が必要と感じているが、市の担当者に「学校敷地内の仮設には建てられない」と言われた。最近は高血圧で病院に通う。
「何かしようとすると、いつもいつも壁が立ちはだかるんだ」【中川聡子】