2011年 06月 20日
猫80匹生き延びていた 宮城県石巻田代島
人口より猫が多い「猫の島」として知られる宮城県石巻市の田代島。東日本大震災の津波で甚大な被害を受けたが、
島民に大事にされてきた野良猫たちは地震や津波に負けず、たくましく生き延びていた。
田代島は、作家・井上ひさしさんが「ひょっこりひょうたん島」のモデルにしたともされる島の一つ。かつては養蚕が盛んで、
猫はネズミよけとして飼われていた。やがて猫が自然繁殖を始めた後も「大漁を招く」として島民に大事にされ続け、
島の中心部には「猫神社」も建つ。島民によると、震災前と変わらず約80匹の猫が生き延びたとみられる。
海岸近くの自宅で野良猫に餌やりをしている畠山和子さん(72)は「地震の時は、私たちよりも逃げるのが早かったくらい」と当時を振り返る。
津波が引いてしばらくすると、山の方から猫が下りてくるのが見えた。「きっと猫神社の方へ逃げていたんでしょう」
心配なのは餌不足。島の仁戸田漁港で漁師の「おこぼれ」にあずかる猫が多かったが、漁港は津波で壊滅的被害を受け、
漁業再開のめどは立っていない。猫たちは今は各地から送られたキャットフードを食べているという。
船や車、カキの養殖設備などを津波で失った阿部頼男さん(73)は「猫に魚を食わせてやりたいが、自分の生活で精いっぱい。」
電気や水道も完全には回復しておらず、島に7軒ある民宿は休業中で、観光客受け入れも厳しい。
島の復興は猫たちの運命も左右しそうだ。【塚本恒】
毎日新聞 2011年5月27日 11時59分